ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、過酷な屋外環境における実証実験が進められている。マクニカ(横浜市)は9月5日、発電効率を向上したペロブスカイト太陽電池の苛烈環境下での実証事業を開始したと発表した。
同事業は、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において、「港湾などの苛烈環境におけるペロブスカイト太陽電池の活用に関する技術開発」として採択された。2023年度から3年間の技術開発・実証事業に取り組んでおり、今回が最終年度になる。ペクセル・テクノロジーズ(横浜市)、麗光(京都市)と共同で推進している。
2024年度は、接着しない独自の新工法でペロブスカイト太陽電池72枚を設置し、正常に稼働することを確認した。ペロブスカイト太陽電池の合計出力は1.5kWで、重耐塩環境下において出力1kW規模の発電と定常電力利用を実現した。2025年度は、横浜大さん橋デッキ上に、昨年より発電効率を向上させたペロブスカイト太陽電池ユニット60枚・1kW相当規模を設置した。1つのユニットは、3枚のペロブスカイト太陽電池で構成され、大きさは1m×30㎝。
実証では、昨年以上の発電量を目指す。また、同じペロブスカイト太陽電池ユニットを通常環境下にも設置し、重耐塩環境と通常環境における耐久性や発電対応力を比較する。このほか、蓄電池やIoT機器とのシステム統合、独自の新たな2通りの設置工法の比較などを行う。期間は2025年9月1日〜2026年2月28日。
また、アイシンは同日、自動車販売会社のネッツトヨタ郡山(福島県郡山市)と共同で、ペロブスカイト太陽電池の実証実験を行うと発表した。ネッツトヨタ郡山の店舗カラーと親和性の高い青色に加飾したペロブスカイト太陽電池を、9月7日に移転オープンした「ネッツトヨタ郡山 安積店」の店舗壁面に設置した。
30cm×30cmのペロブスカイト太陽電池1枚を3枚で1ユニットとし、16ユニットを設置した。発電した電力は、店舗内の一部の100Vコンセント、店舗外の一部の照明に使用する。郡山市の内陸性気候という寒暖差の大きい環境下で、パネル色の変化や周囲の反射光の影響の有無などを確認する。また、加飾を施していないペロブスカイト太陽電池パネルとの発電性能や耐久性の比較評価を行う。
アイシンのペロブスカイト太陽電池開発では、20年以上の有機系太陽電池の研究開発による技術を活用し、薄ガラスを用いた独自のフィルム構造による高い耐久性を目指している。今後、建屋壁面のデザインや都市景観と調和する商品モデルを確立する。2028年のテスト販売開始を目指す。